妖怪の学術的研究価値とは

 

妖怪を大真面目に学術的に扱っている学問には、民俗学や文化人類学があります。妖怪はオカルトであり、真面目に研究するなんて、無駄なことだと考えている人も多いかもしれません。しかしそれは間違いです。

 

 

妖怪を通じてわかる価値観の変化

妖怪というのは、人々の自然=制御できないものに対する畏怖の念から生まれたもの。つまり人の心の反映です。古来より、妖怪にまつわる記述が確認できる書物は数多ありますが、これらは当時の人々の価値観や信仰、文化、生活習慣などを研究する上で、非常に希少価値の高い資料となります。

 

道具に対する価値観の変化

例えば、中世からは、古代には見られなかった、「付喪神」のような「道具に宿る妖怪」が登場するようになります。これは人々が自然から離れ、様々な道具に囲まれて生活するようになってから、「道具にも魂が宿る」という価値観が生まれた為です。

 

自然に対する価値観の変化

また戦国時代や幕末など、社会情勢が不安定なほど、怪奇談が流行しました。逆に江戸時代のような安定した社会では、それまで「恐怖の象徴」だった妖怪を「キャラクター化」して楽しむ作品が流行するようになります。

 

江戸時代にもなると、人々にとって自然はそこまで恐怖の対象ではなくなっていました。妖怪なんていないというのがほぼ常識になっており、しかしあえているものとして楽しもうという考えから、妖怪を娯楽化して楽しむ妖怪文化が生まれたのです。

 

このように妖怪研究から、社会の移り変わりや、人々の心の変化を知ることができるのです。

 

妖怪研究はオカルト?

仏教哲学者の井上円了(1858- 1919)さんは、妖怪というのは、そのほとんどが嘘・人為的なモノ、もしくは自然現象を誤認したものとして、妖怪研究を「自然科学を解明する為のもの」であると位置づけています。

 

ようは妖怪のほとんどは迷信であるとして、その迷信を打破する目的に、科学的見地から妖怪研究を行っていました。妖怪研究は決してオカルトではなく、むしろリアルを追及する学問なのです。