妖怪「土蜘蛛」の伝承・正体・名前の由来

土蜘蛛(鳥山石燕『今昔画図続百鬼』より)

 

土蜘蛛は、山に棲む大きな蜘蛛の妖怪です。年老いた大蜘蛛は妖力を持ち、美しい女性や法師に変身するといわれています。当記事では、土蜘蛛について、その正体・伝承・名前の由来などに焦点を当て、詳細に解説していきます。

 

 

土蜘蛛の伝承

土蜘蛛は、平安時代の源頼光の伝説に登場する大きな蜘蛛の妖怪です。別名は「八束脛(やつかはぎ)」「大蜘蛛(おおぐも)」「山蜘蛛」などと呼ばれています。土蜘蛛は、鬼の顔に虎の胴体、クモの手足を持つといわれ、人間に危害を加える恐ろしい妖怪とされていました。

 

「土蜘蛛」と呼ばれた人々

古代の日本において、ヤマト政権・大王(おおきみ)に従わない土豪(どごう)を「土蜘蛛」と呼んでいました。土豪とは、地方の小さな豪族のことで、村や地域を支配する一族を指します。

 

「土蜘蛛」と呼ばれる人々は全国各地に存在し、日本最古の歴史書とされる「古事記」や「日本書紀」、各地の風土記などにもたびたび登場します。奈良県の大和葛城山には、初代天皇とされる神武天皇が討伐した「土蜘蛛」を埋めたという土蜘蛛塚があります。

 

妖怪としての土蜘蛛

平安時代には「土蜘蛛草紙(つちぐもぞうし)」や「平家物語」に妖怪としての土蜘蛛が登場します。土蜘蛛は物語や戯曲などに取り上げられ、源頼光(みなもとのよりみつ)に対抗する蜘蛛の妖怪として、時代とともに定着していきました。

 

絵巻物「土蜘蛛草紙」においては、土蜘蛛が巨大な蜘蛛の形で表現されています。この物語では、激しい戦闘の結果、巨大な蜘蛛の首が切り落とされ、蜘蛛の腹部からは1990個の死人の首が現れるとされています。また、蜘蛛の側面からは多くの子グモが飛び出し、その中には20個の小さなドクロが含まれているという話が語られています。

 

土蜘蛛の正体

平家物語に登場する大蜘蛛は、神武天皇によって捕らえられた土豪の「土蜘蛛」の怨霊だという説があります。

 

土蜘蛛の名前の由来

土蜘蛛という名前は「土隠(つちごもり)」に由来しているといわれています。

 

土蜘蛛と呼ばれる人々は、背が低く手足が長かったといわれていて、洞穴(ほらあな)のような住居で暮らしていた様子、穴に籠る様子からつけられたものだとされています。実際に存在する生物の「ツチグモ」とは関係はありません。

 

土蜘蛛のまとめ

以上、妖怪土蜘蛛について解説させていただきました。不気味な形をして、どこからともなく現れる蜘蛛は昔から恐れられていたようです。恨みを抱いてたたりをする霊と考えられていました。

 

土蜘蛛は妖怪ウォッチにも登場します。蜘蛛の足を連想させる髪型に赤い隈取(くまどり)、歌舞伎役者のような出で立ちで描かれています。興味がある方はぜひチェックしてみてください!