木霊(こだま)は、100年以上の年輪を重ねた樹木に宿る精霊。切ったり焼いたりすれば不幸が降りかかるが、供物を捧げるなどすれば恩恵を与える。
油坊(あぶらぼう)は怪火の妖怪。昔、貴重な油を盗んで罰せられた比叡山の亡霊。
表記・呼称 | 油坊(あぶらぼう)、油盗人(あぶらぬすっと) |
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簡易解説 | 怪火の妖怪。昔、貴重な油を盗んで罰せられた比叡山の亡霊。 |
危険度 | ★★★★★★★★★★ |
容姿 | 人間型 動物型 植物型 器物型 建造物型 自然物型 |
能力・特性 | 不明 |
伝承地 | 滋賀県、京都府 |
出現場所 | 山 水 里 屋敷 |
記録資料 | 『諸国里人談』、『古今百物語評判』 |
登場創作物 |
滋賀県では野洲郡欲賀村(現・野洲市)に、晩春から夏にかけて「油坊(あぶらぼう)」と呼ばれる怪火が発生すると伝えられています。ただ現れて人を驚かすだけで、それ以上何か危害を加えるということはないようです。
また江戸時代中期に成立した菊岡沾涼の『諸国里人談』には、同じような怪火が比叡山の西のふもとにも出現したと記されています。
油坊の正体は、昔灯油を盗んで罰せられた比叡山の僧の亡霊といわれています。
夜は真っ暗なので明かりがないと生活することができません。電球や電気スタンドがない時代は、行灯や灯台で油を燃やすことで光にしていましたが、油は植物や魚から抽出する限りある貴重なものでした。油を盗んだり粗末に扱うことは重罪であり、「油泥棒は妖怪になる」と戒められたのです。そして
油坊は「油盗人(あぶらぬすっと)」と同種の妖怪と考えられます。「油盗人(あぶらぬすっと)」とは、江戸時代の怪談本『古今百物語評判』に載っている妖怪です。同書によれば、比叡山延暦寺の油を盗んで富を得た者が、後に破産し、どん底に沈んだまま死んでしまったそうです。それ以降延暦寺に怪火が現れるようになり、油泥棒の霊として「油盗人(あぶらぬすっと)」と呼ばれたといいます。
姥火は河内国(現:大阪府)や丹波国(現:京都府北部)に伝わる怪火です。ある老婆が毎晩のように神社の御神灯の油を盗み、自分の家の明かりにしていました。上述したとおり、油を盗むのは大罪ですから、神罰が下り火の玉にされたのです。これが「姥火」の正体です。
火の玉の姿でが突然家の中に入ってきて、行灯の油をぺろぺろなめて去って行く妖怪です。油をなめる時の姿が赤ん坊なので「油赤子」と呼ばれるようになったようです。