妖怪「のっぺらぼう」の伝承・正体・名前の由来

のっぺらぼう(竜斎閑人正澄画『狂歌百物語』より)

 

のっぺらぼうは、顔に目や鼻、口がない妖怪で人間のふりをして人に近づき、人を驚かすといわれています。当記事では、そんなのっぺらぼうについて、その正体・伝承・名前の由来などに焦点を当て、詳細に解説していきます。

 

 

のっぺらぼうの伝承

のっぺらぼうは卵のようにつるっとした顔を描かれることが多いのですが、最初から目鼻がなかったわけではありません。

 

妖怪画集「画図百鬼夜行」や「百怪図巻」には、のっぺらぼうの古い姿とされる「ぬっぺっほふ」が登場します。ぬっぺっほふは一頭身で肉塊のような外見を持ち、垂れ下がるように描かれた目、鼻、口が特徴的な姿が描写されています。

 

もともと顔に目鼻のない妖怪ではなく、ぬっぺり(顔のつくりにしまりがなく、間が抜けている)とした顔の妖怪でしたが、これが長い時間をかけて目や鼻、口がなくなり、現在ののっぺらぼうの形になったといわれています。

 

貉での伝承

のっぺらぼうは、小泉八雲の怪談「貉(むじな)」に登場する妖怪としても知られています。作中に「のっぺらぼう」という表記はなく、顔のない妖怪は「むじな」が変身した姿だと書かれています。

 

ある男が夜道を歩いていると、目も鼻も口もない、のっぺらぼうの女に会いました。男は驚き、あわてて逃げ、蕎麦屋に駆け込みました。蕎麦屋の主人にそのことを話すと、その主人ものっぺらぼうだった、という話です。

 

このようにのっぺらぼうの怪談話は、同一の人物を二度驚かす「再度の怪」という形式で語られるパターン多く、これは中国の怪談話などの影響によるものといわれています。

 

目と鼻はなく口だけがある女の妖怪「お歯黒べったり」ものっぺらぼうの一種であるという説があります。花嫁のように着物を着た女の妖怪で、歯にはお歯黒がベッタリと塗られています。

 

のっぺらぼうの正体

人を化かすとされているタヌキやムジナが、のっぺらぼうの正体として明かされることも多いようです。のっぺらぼうは、人に対して危害を加えたりせず、ただ人を驚かす妖怪として知られていますから、その点からも動物のいたずらと考えられているのかもしれません。

 

のっぺらぼうの名前の由来

のっぺらぼうは、「ずんべらぼう」、「ぬっぺらぼう」、「ぬっぺっぽう」などさまざまな名前で呼ばれています。

 

顔に白粉(おしろい)を厚くべったりと塗りたくったような、のっぺり(ぬっぺり=一面に)と化粧した様子を「白化(しらばけ)」といい、これに擬人化を表現する「坊(ぼう)」をつけて誕生したのが、「ぬっぺら坊」「のっぺら坊」だといわれています。

 

肉の塊のような姿の妖怪「ぬっぺっぽう」から、目鼻のない「ぬっぺら坊」になり、「ぬっぺらぼう」や「のっぺらぽん」と言うようになったという説もありますね。

 

のっぺらぼうのまとめ

以上、のっぺらぼうについて解説させていただきました。のっぺらぼうは年月をかけて変化した妖怪といえます。顔に目鼻口がない不気味な妖怪ですが、人に危害を加えないことからどこか憎めない存在です。のっぺらぼうはゲゲゲの鬼太郎にも登場します。興味がある方はぜひチェックしてみてください。