表記・呼称 | 枕返し(まくらがえし)、枕小僧(まくらこぞう) |
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簡易解説 | 枕返し(まくらがえし)は、寝ている間に悪戯をしてくる妖怪。起きたら枕が動いてる、体の向きが逆になっている、などの現象は枕返しの仕業とされる。 |
危険度 | ★★★★★★★★★★ |
容姿 | 人間型 動物型 植物型 器物型 建造物型 自然物型 |
能力・特性 | 枕返し |
伝承地 | 岩手県、群馬県、静岡県など |
出現場所 | 山 水 里 屋敷 |
記録資料 | 『画図百鬼夜行』、『狂歌百物語』 |
登場創作物 | ゲゲゲの鬼太郎、妖怪ウォッチ、地獄先生ぬ〜べ〜 |
夜中寝ている時にやってきて、枕の向きを変えたり、頭と足の向きを逆にしたりといった悪戯を働きます。
宿屋の人間が、ある金持ちの旅行者を殺害し金を奪ったところ、その宿屋には夜な夜な殺された者の霊がやってくるようになり、宿泊者の枕を動かしたという話もあります。
枕返しの姿は、伝承によって異なり明確な外見は伝わっていません。童子※、坊主の姿をしているという伝承もあれば、美しい女性の姿をしているという伝承もあります。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』では、小さな金剛力士像?のような姿で書かれています。
※枕返しが童子姿の場合「枕小僧(まくらこぞう)」とも呼ばれます。
その部屋で死んだ人の霊が悪戯をしているとも、枕返し以外の顔を持つ妖怪の仕業ともいわれています。
その妖怪は地方によって異なり、
という具合に様々なようです。
現代の常識で考えれば単に「寝相が悪いだけ」で片付けてしまいますが、昔はよくわからない不思議な現象として幽霊や妖怪の仕業と考えたのですね。
大半は寝ている者に軽い悪戯を行うだけの危険性のない妖怪です。しかし伝承の中には枕をひっくり返した人間の魂まで抜いてしまったという話もあり、全て安全とはいえないようです。和歌山県には以下のような怪奇談が伝わっています。
昔木こりが大きな樅の木を8人がかりで切ろうとしていました。ノコギリでせっせと切り進め1日で半分までいき、残りは翌日に持ち越しとしました。
ところが次の日、不思議な事に切り進めた部分が修復され元通りに戻っているのです。なんと樅の木には精霊がおり、木を切られまいとおがくずで切られた部分を治していたのでした。
次の日もまた次の日も同じでした。そこで木こりたちは、修復に使われているらしいおがくずを燃やしてしまい、伐採を完了させました。
するとその夜寝ている木こり達の前に精霊がやってきて、彼らの枕を次々と返していきます。翌朝、枕を返された者は息をしていませんでした。
1人だけ助かった者がおり、その者は寝る前に般若心経を唱える習慣があり、精霊に信心深い人間として見逃して貰えたのだそうです。
日本では古来より「人は寝ている間、魂は異世界に飛んでいっている」と信じられてきました。「夢」というのは「異世界の情景」だったのです。そして民俗学における枕の解釈は「現実世界と異世界を繋ぐ境界線」です。つまり寝ている間に枕をひっくり返されるということは、魂が現実世界に帰る道を閉ざすことを意味するのです。