二口女(ふたくちおんな)は後頭部に口がある女の妖怪。人前では決して食事をせず、誰も居ない隙を見て数人分の食事を平らげるという。
琴古主(ことふるぬし)は琴の妖怪。人に音色を覚えてもらわぬまま使われなくなった琴の付喪神。
表記・呼称 | 琴古主(ことふるぬし) |
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簡易解説 | 琴の妖怪。人に音色を覚えてもらわぬまま使われなくなった琴の付喪神。 |
危険度 | 不明 |
容姿 | 人間型 動物型 植物型 器物型 建造物型 自然物型 |
能力・特性 | 琴の音色を奏でる。 |
伝承地 | 不明 |
出現場所 | 山 水 里 屋敷 |
記録資料 | 『百器徒然袋』 |
登場創作物 | 妖怪百姫たん! |
鳥山石燕による妖怪画集『百器徒然袋』では、壊れた琴に目や口が付き、弦が髪のようになった姿で描かれています。
鳥山石燕によるオリジナルなので古い伝承がなく、「琴の妖怪」ということ以外詳細が不明です。しかし平成以降の解説では、
「景行天皇の遠征の際、佐賀県のある丘の上で素晴らしい宴を行った記念として琴が置かれ、それが大きな楠に姿を変えた。以降その楠の前を通るとどこからか琴の音色が聞こえてくるようになり、いつしかその木が「琴古主」と呼ばれるようになった。」
と説明されることもあります。以下で解説するように琴古主とは、琴に宿った霊の「忘れられてたまるか!」という執念から生まれた付喪神なので、「1人でも多くの人に音色を聞いてもらいたい」という意思の表れがこの怪異なのでしょうね。
琴古主は琴の付喪神です。石燕による解説文には以下のように記されています。
「八橋とかいへる瞽しゃのしらべをあらためしより つくし琴は名のみにしてその音いろをきき知れる人さへまれなれば そのうらみをしらせんとてか かかる姿をあらはしけん」
ようするに江戸時代前期を生きた音楽家八橋検校の筑紫箏が変化したものとされています。地味な音色ですぐに廃れてしまったので、忘れられまいとの念から付喪神として姿を現したとされています。
国際日本文化研究センター蔵『百鬼夜行絵巻』より
石燕による琴古主は、室町時代の妖怪絵巻『百鬼夜行絵巻』に書かれている琴の妖怪から着想を得たのではともいわれています。上記画像は『百鬼夜行絵巻』の一部ですが、琵琶の妖怪に引っ張られている琴の様子が確認できます。確かに石燕による琴古主と似ていますね。