妖怪「ダイダラボッチ」の伝承・正体|大きさは?もののけ姫にも登場!
ダイダラボッチは、山や湖沼を作り出した巨大な妖怪。各地に様々な伝承があるが、巨人信仰から生まれたといわれる。

妖怪「ダイダラボッチ」の伝承・正体|大きさは?もののけ姫にも登場!


妖怪「ダイダラボッチ」の伝承・正体|大きさは?もののけ姫にも登場!
勝川春章・勝川春英画『怪談百鬼図会』より

 

 

ダイダラボッチの基本情報

表記・呼称 ダイダラボッチ(大太法師),ダイダラボウ(大太郎坊),デーランボウ,レイラボッチ
簡易解説 山や湖沼を作り出した巨大な妖怪。各地に様々な伝承があるが、巨人信仰から生まれたといわれる。
危険性 ★★★★★★★★★★
容姿タイプ 人間型 動物型 植物型 器物型 建造物型 自然物型
能力・特性 怪力、巨体
伝承地 長野県,茨城県,愛知県など
出現場所 山 水 里 屋敷
記録資料 常陸国風土記,播磨国風土記など
登場創作物 もののけ姫,ゲゲゲの鬼太郎,手裏剣戦隊ニンニンジャー,地獄先生ぬ〜べ〜,妖怪ウォッチなど

 

ダイダラボッチの正体・生まれについて

山や湖沼を創ったという伝承が多いことから、国作りの神に対する巨人信仰がダイダラボッチを生んだと言われています。湖はダイダラボッチの足跡、山はダイダラボッチの落とし物とされています。

 

ダイダラボッチの名前の由来

「ダイダラボウ」、「デーランボウ」、「レイラボッチ」など様々な呼ばれ方をしています。名前の由来は諸説あり、はっきりしませんが、一説には大人を意味する「大太郎」に由来するというものがあります。

 

ダイダラボッチの危険性について

特に人間に積極的に危害を加えたという記録はないので、踏みつぶされないように気を付ければ特に危険はないと思われます。むしろ人を助けたという伝承も少なくないので、うまく共生できれば人にとって恩恵ある妖怪といえるでしょう。

 

ダイダラボッチの伝承

●ダイダラボッチの名前が初めて出てきた『常陸国風土記』(8世紀に成立)によれば、茨城県にある大串貝塚は、ダイダラボッチが貝を食べた後に、貝殻を捨てた場所だといわれています。その為この貝塚の近くには、ダイダラボッチの大きな石像が建てられています。

 

●かつて神奈川県の相模原市に鹿沼と菖蒲沼という二つの沼がありました。この二つの沼が出来る前の場所に、ダイダラボッチが富士山を背負ってやってきました。しかし日本一の山はあまりに重く、途中でいったん富士山を下ろし一休みします。しかし再び運ぼうとしたところ、根が生えてしまっており持ち上がらず背負い縄が切れてしまいます。その時の踏ん張りでできた沼が鹿沼(左足)と菖蒲沼(右足)と言われています。

 

●秋田県横手市にはダイダラボッチが人間を助けたという伝承も残っています。秋田県の横手盆地はかつて大きな湖だったので干拓をを行って盆地になったという経緯があります。その干拓の最中にダイダラボッチが現れて水をかき泥をすくってくれたので、工事がはかどったそうです。

 

もののけ姫とダイダラボッチ

ダイダラボッチと聞いて多くの人が頭に思い浮かべるのが、宮崎駿監督の『もののけ姫』だと思います。この作品には、あらゆる生命の与奪をつかさどる神「シシ神」が登場し、「ダイダラボッチ」はその夜の姿として描かれています。「シシ神」は物語終盤で、不老不死の力があるとされる首を人間に打ち落とされ、首を取り返す為に「ダイダラボッチ」として大暴走します。体内から噴出した黒い液体が山を覆っていき、触れた者の命を奪い、森を枯らしていくのです。まさに伝承通りの「山の神」の怒りといった具合です。最終的には主人公の手によって首は返されたものの、直後に朝日を浴びて地に倒れてしまいました。吸い過ぎた命が噴出し、枯れ果てた地にわずかに緑が戻ったところで物語は幕を閉じます。

 

『もののけ姫』の劇中では「ダイダラボッチ」は人間も動物も超越した尊くも恐ろしい存在として描写されています。一貫して動物の都合でも人間の都合でも動いておらず、淡々と世界を創るのみ。森を侵し続ける人間を滅ぼそうともしません。しかし人間が超えては成らない一線を越えた(シシ神殺しを行った)ので死の塊となり暴走しました。この作品は「ダイダラボッチ」を通して、人間がこれまでやってきた事【自然を破壊し動物たちの居場所を奪ってきた事】を皮肉し、今一度足下を見るよう警告を発しているのだと思いました。「ダイダラボッチの暴走」は現代社会にとって人事ではないのです。