江戸時代から頻繁に扱われるようになった「幽霊」(イラストは鳥山石燕『画図百鬼夜行』より)
江戸時代には多数の妖怪画絵巻が刊行されることになります。中世の作品では、妖怪は人に害をなす「脅威の象徴」として描かれることが多かったのに対し、江戸時代以降の作品では、面白おかしい、親しみのある「キャラクター」として描かれることが多くなり、妖怪に対する見方の変化が見て取れます。
妖怪に対する恐怖心、関心が薄れる代わりに、幽霊・怨霊を扱う話が多くなりました。自然の脅威「妖怪」よりも、人間の業や執念、嫉妬などが具現化したともいえる「霊」に対する恐怖心が上回るようになったのでしょう。
江戸時代には出版技術の向上とともに、様々な創作物が出版されましたが、妖怪を扱ったものは特に人気がありました。貸本屋の登場で、よりたくさんの人々に妖怪本が読まれるようになり、それまで地域で解釈が異なった妖怪の姿も、今私たちが「河童」や「天狗」と聞いて誰もが同じ姿を思い浮かべるように、認識が共有されていったのでした。
登場する妖怪:たくさん
画図百鬼夜行(がずひゃっきやこう)は安永5年(1776年)に刊行された鳥山石燕の妖怪画集です。河童や天狗、狸など有名どころの妖怪が多数登場します。また額烏帽子(三角のやつ)を額に着け、白装束をまとった、今では定型化されているステレオタイプの幽霊が登場するのも印象的です。
登場する妖怪:たくさん
今昔画図続百鬼(こんじゃくがずぞくひゃっき)は1779年(安永8年)に刊行された鳥山石燕の妖怪画集です。画図百鬼夜行の続編ですね。今作から前作のように妖怪の絵と名称だけでなく、妖怪一体一体に説明書きが添えられています。またこの画集では石燕による創作と思われる妖怪のほか、中国の妖怪も描かれています。
登場する妖怪:たくさん
今昔百鬼拾遺(こんじゃくひゃっきしゅうい)は、1781年(安永10年)に刊行された鳥山石燕の妖怪画集です。「画図百鬼夜行」、「今昔画図続百鬼」に続く第三作となります。前作同様一体一体の妖怪に説明書きが添えられています。これまで伝承で出てきた妖怪ではなく、石燕の創作したものも多く含まれているのが特徴です。
登場する妖怪:たくさん
百器徒然袋(ひゃっきつれづれぶくろ)は、1784年(天明4年)に刊行された鳥山石燕の妖怪画集です。「画図百鬼夜行」「今昔画図続百鬼」「今昔百鬼拾遺」に続く第四作で、石燕の遺作でもあります。百鬼夜行絵巻を見たあと夢の中に出てきた妖怪を描いたそうです。内容としては百鬼夜行絵巻の影響を受けているので、同作に多い器物タイプの妖怪が多数登場します。
登場する妖怪:たくさん
「百怪図巻(ひゃっかいずかん)」は元文2年(1737年)、英派の絵師である佐脇嵩之に描かれた妖怪絵巻です。ぬらりひょんや雪女など、全30の妖怪画が収録されています。
登場する妖怪:たくさん
「蕪村妖怪絵巻(ぶそんようかいえまき)」は、江戸時代中期の画家である与謝蕪村により書かれた妖怪絵巻です。漫画タッチな軽い画風で書かれた全8点の妖怪画が収録されています。絵に説明書きが添えられているものもあれば、名称のみのものもあります。
登場する妖怪:たくさん
「絵本百物語(えほんひゃくものがたり)」は、1841年(天保12年)、桃山人により書かれた奇談集です。江戸時代に流行した怪談話が多数収録されています。各話ごとにその話に登場する妖怪の画が掲載されており、画集も兼ねているのが特徴的です。
登場する妖怪:酒呑童子
「御伽草子(おとぎぞうし)」は、江戸時代中期につくられた、23編の物語の総称です。『酒呑童子』のように妖怪を描いた物語も含まれています。
登場する妖怪:幽霊
諸国百物語(しょこくひゃくものがたり)は、延宝5年(1677年)に刊行された怪談集です。江戸時代に多数刊行される怪談本の先駆けともいえる作品であり、のちの多くの作品に影響を与えています。生前ひどい目にあった幽霊を扱う話が多いです。
登場する妖怪:鬼、幽霊
「雨月物語」(うげつものがたり)は、上田秋成作の、明和5年(1768年)、安永5年(1776年)に刊行された怪異小説です。9篇から成っており、うち4篇は幽霊に関するお話です。鬼が出てくるのは青頭巾という僧侶のお話です。